常夜の炎に包まれし右手と、闇を払うための手続きについて

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体験

みなさんは、常夜の炎に身を焦がした事がありますか?

あるいは、選ばれし戦士(エインフェリア)であると、大天使某(なにがし)エルから啓示を受けましたか?

どちらか一方でもあるのであれば、私から言う事はありません。

そのままの日常をお過ごしください。

どちらもなければ、この記事を読んでいくことをお勧めします。

どういうこと?

見出しのように思った人が9割9分だと思うので、本当に伝えたいことは

はっきりと平易な言葉で書くことにしよう。

「料理でやけどしたこと、ありますか?」

ということである。後半の某エルに特に意味はない。

なぜこんなことを聞こうかと思ったのかというと、前にある体験をしたことによる。

レシピはちょい無視で!

時はまだ東京の片隅で一人暮らしをしていた数年前にさかのぼる。

僕はレシピサイトを見ながら、とある料理を作ろうとしていた。

常夜鍋である。

常夜鍋とは・・・北大路魯山人や向田邦子などが好んで食べていたと言われる鍋の一種。

日本酒と水で豚肉と葉野菜を煮込む。(Wikipediaより引用、意訳)

と言う事で、ちょっと食通気取りの鍋なのである。

ところで、本筋からは離れるがここで一つ覚えておいてもらいたい。

自炊を良くする成人独身男性は皆例外なく

「ちょっと変わってて気合が入った料理」

を作りたがる。ビーフストロガノフ、ラザニア、ティラミス、その他もろもろ・・・。

ご多分に漏れず僕もそうだったわけだが、こういうのを作れる奴よりは

地味でも日々のおかずをコンスタント・クイックに作れる方が生活を共にする上では絶対に良い。

気合入れてしか作れない料理なんて年に何回も披露できるわけがないのだから、

それよりも日々の食事のベースラインを向上させることを考えるべきなのだ。

当てはまっている男性諸君は猛省した上で、まずはきんぴらの調理に励むように。

さて、本題に戻ろう。

常夜鍋のレシピとしては、

①日本酒と水を大体5:5で昆布と一緒に鍋に入れて、

沸騰したら豚肉とほうれん草をぶち込む

③ポン酢中心のタレでいただく

という至極簡単なものである。

それゆえ、僕は油断していた。そして以下の短絡的な考えを抱く。

『沸騰したら具材ぶちこめばいいんでしょ、簡単簡単』

『でも沸騰するまで時間かかるなあ・・・せや、

蓋したら早く沸騰するんじゃね?レシピには書いてないけど

ということで、まあまあ大量の日本酒と水を小さめの鍋に入れ(1人用だからね)

蓋をして火にかけた。

そして悲劇は起こった

数分後、蓋と鍋の隙間から蒸気が出始めたので、そろそろ具材の入れ時のようだ。

左手に具材の皿を持ち、右手で蓋を何気なく取った。

ボン

まあまあな音量の破裂音と右手首に鋭い痛み。

驚いて顔をそちらに向けると、蓋が右手ごと青い炎に覆われている。

(いや青の祓魔師かて)

と僕は思った。

人間は謎の現象が起こると逆に冷静になるようだ。

(とりあえず火を消さな・・・ボウルにはめとくか)

比較的スムーズに、静謐な動きで蓋をステンレスのボウルにはめ込むと、炎も止まった。

燃焼には空気の循環が大事っていうからね。キャンプファイヤーで習ったんだ。

そして鍋本体の方を見ると、そっちもいぶし鐵のボディがまあまあ青く燃えていた

さすがに慌ててシンクにぶち込んで水を流し続けて事なきを得る。

ひとまず火災保険の発動は防げたが、

次第にジンジンと痛み始める右手。浮かぶ疑問符、混乱と後悔に浸る心中。

「なんでやねん」

それが、テンパった僕の精一杯の呟きだった。

原因、それはルール違反

さて、なぜこんなことが起こったのか。答えは中学校の理科にあった。

「蓋をする」と言う事は、「蓋までたどりついた蒸気は冷えて液滴になる」

ということを意味するのである。

そして、中学校の理科を思い出してほしい。

共沸と言う現象を覚えているだろうか。

水とエタノールは任意の割合で混ざるが、これらを加熱したときは

混合物の沸点は100℃以下になり、沸騰し始めたあたりの蒸気には

エタノールが多く含まれていたはずだ。

大体、今回の日本酒だと15%程度のアルコール度数なので、

混合液が蒸発した蒸気中のエタノール濃度は3~40%程度となる。

液滴もこのくらいの濃度としてよいだろう。

そして、蓋を開けた時には外側の鍋肌まで湯気が広がりうることを考えると・・・

まあまあアルコール度数の高い鍋肌の湯気にガスコンロの火から引火

そのまま蒸気を経由して蓋に炎が到着

更にアルコール度数の高いエタノール液滴で覆われた蓋の表面で炎上

の3コンボで右手が燃えたのが(たぶん)真相のようだ。草薙京の鬼焼きじゃねえんだから。

直接原因は分かった。では、根本原因は・・・そう、「レシピの無視」である。

物事の手順には意外と理由がある

本みりんを使った料理で煮切る、などという調理工程はよくある。

これは明示的にアルコールを飛ばす事を意味しており、蓋をしないのは暗黙の了解だ。

よくよく考えれば常夜鍋もこれと同じくアルコール分を飛ばして旨みを残す手法だが、

レシピの手順の目的を分かっていなかったのである。

これに限らず、世の中の作業と手順には何らかの理由があってそうなっている

ものが多い。

それを、何もわからず表面的にとらえ、慣れた気になってアレンジをするのは

非常に危険だと言う事が今回の件で得た教訓と言えるだろう。

皆も気を付けてほしい。

・・・こういう教訓めいた話で落とさないと、

「ただイキって右手を燃やした過去を持つ男」が一人発生することになるので、

本当に気を付ける事。いいね?

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